「させていただく」敬語の正しい使い方と言い換えテクニック

「させていただく」敬語の正しい使い方と言い換えテクニック ビジネス敬語

「させていただく」という表現、ビジネスの現場で頻繁に耳にしませんか?必要以上に乱用することを「させていただきます症候群」ともいうほど、多用されるこの言葉。丁寧な表現として使っているつもりが、実は誤った使い方をしていることがあります。「させていただく」には明確な使用条件があり、むやみに使うことは好ましくありません。本記事では、ビジネスシーンで適切に使用するためのポイントと、より自然な言い換えテクニックをご紹介します。

「させていただく」の基本的な意味と正しい使い方

「させていただく」の意味

「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語で、相手に対する敬意を表現する言葉です。相手から許可を得ての行為や、自分が恩恵を受けることといった意味があります。

例えば「スケジュールを変更させていただきます」は、相手の許可を得ての変更であり、適切な使用例です。また、「早退させていただけますか?」というのも、早退の許可を得ることで自分自身が恩恵を受けるため、正しい使用例です。

「させていただく」の意味

「させていただく」が使える条件

文化庁の「敬語の指針」によれば、「させていただく」を使用できる条件は2つあります。
・相手や第三者から許可を得ている場合
・その行為によって自分自身が恩恵を受ける場合 

この2つの条件を満たす場合に「させていただく」は使用できます。近年は、『させていただきます症候群』なる単語が出現するほど、自身がへりくだるために多用する風潮が見られます。しかし、許可を得る必要がない場合や、恩恵を受けない場面では、たとえ相手が目上の人であっても使用を控えるとよいでしょう。

参照:文化庁「敬語の指針」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

「させていただく」の使用が適切な場面

「させていただく」が適切なのは、具体的にはどのようなシーンでしょうか。

例えば、取引先に「商品の価格を改定させていただきます」と伝える場合、顧客の許可が必要であり、かつ企業としての恩恵を受けるため適切な使い方です。
また、「書類の提出期限を延長させていただきます」という表現も、相手の許諾を得ての行動となるため正しい使用例です。

取引先や社内でのやり取りにおいて、「明日の会議で発表させていただきます」という場合、貴重な発表の機会という恩恵を受けているため適切な表現です。しかし、通常の業務分担として決まった発表であれば「発表します」で十分です。

「させていただく」が不適切な場面

「させていただく」が不適切な場面として、最も注意が必要なのは日常的なビジネスコミュニケーションです。例えば以下のような文章は、相手からの許可も恩恵も関係しないため不適切といえます。「~~ます」とシンプルに表現する方が自然です。

「させていただく」が不適切な場面

「今日も頑張らせていただきます」→ 「今日も頑張ります」

「業務を進めさせていただきます」→「業務を進めます」

「本日は以上で終わらせていただきます」→「本日は以上で終わります」

特に、相手への報告や連絡事項では、「ご報告させていただきます」「ご連絡させていただきます」という表現は避けます。これらの行為は通常業務の一環であり、特別な許可や恩恵を受けているわけではないためです。丁寧に話す場合には「ご報告いたします」「ご連絡いたします」と表現することをおすすめします。

ビジネスシーン別「させていただく」の実践的な使い方

商談・提案の場面

商談や提案の場面での「させていただく」は、相手の許可や恩恵を受ける状況で効果的に使用できます。例えば、取引先への訪問時は「明日15時に訪問させていただきます」と、相手の承諾を得た上での表現が適切です。

新規提案の際も「弊社の商品を紹介させていただきます」と、プレゼンテーションの機会をいただいたことへの感謝を込めて使用できます。

ただし、単なる説明や報告の場面では「させていただく」は不要です。「当社の実績をご説明させていただきます」は「ご説明いたします」で十分です。商談を円滑に進めるためには、過剰な謙譲表現を避け、状況に応じた使い分けが重要です。

電話でのクレーム対応

電話でのクレーム対応時、「させていただく」の使用は状況を見極めることが重要です。例えば、状況確認の際は「お客様のご指摘内容を確認させていただきます」と使用できます。これは、お客様から情報をお聞きする許可を得る意味を含むためです。

電話でのクレーム対応

一方、謝罪の場面で「お詫びさせていただきます」というと、謝罪の誠意が伝わりにくくなってしまいます。「申し訳ございません」「お詫び申し上げます」など、直接的な表現で謝罪するべきです。

また、対応内容の説明時も「商品を交換いたします」「ご返金いたします」など、シンプルな表現が適切です。これらは企業としての当然の対応であり、許可を得る必要がないためです。

メールや文書で書くシーン

ビジネス文書での「させていただく」の使用には、相手からの許可を得ている場合や、自分が恩恵を受ける場合に使用が適切とされています。取引先との文書作成においては「来週の会議資料を送付させていただきます」のように、相手の許可を前提とした表現が適切です。しかし、通常の業務連絡では「送付いたします」とシンプルに表現する方が自然です。

特に注意が必要なのは、一つの文章での「させていただく」の重複使用です。「ご確認させていただき、ご連絡させていただきます」という表現は不自然な印象を与えるため、「確認の上、ご連絡いたします」と簡潔な表現に言い換えましょう。

「させていただく」を使う際の注意点

二重敬語を避ける

「させていただく」を使用する際に気をつけたいのが、二重敬語の問題です。謙譲表現に「させていただきます」を付けると二重敬語になってしまいます。

例えば、「拝見させていただきます」や「お伺いさせていただきます」は、「拝見する」「お伺いする」自体が謙譲表現であるため、誤用です。
適切な表現としては、「拝見します」「伺います」のように謙譲語だけを使用するか、「見させていただきます」「訪問させていただきます」のように一般動詞と「させていただく」を組み合わせて使うとよいでしょう。

また、「お送りさせていただきます」という表現も二重敬語です。「お +(動詞)する[謙譲表現]」と「させていただく」が重なっているからです。
この場合は、「お送りします」または「送らせていただきます」が正しい表現になります。
ビジネスシーンでは、相手への敬意を示しつつも、過剰な丁寧さは避け、自然な敬語表現を心がけましょう。

漢字で書かない

「させていただく」は表記する際にも注意が必要です。一般的に「致す」「頂く」などの謙譲語は漢字表記が可能ですが、「させていただく」の「いただく」は補助動詞であるため、ひらがな書きが正しい表記です。
「させて頂く」と漢字表記すると、古めかしい印象を与えたり、かえって堅苦しさを感じさせたりすることもあります。漢字表記にすると視覚的にも読みにくく、文章の滑らかさも損なってしまいます。
ビジネスシーンでは、「ご提案させていただきます」のように、ひらがなで表記することで、より自然で読みやすい文章になります。特にビジネスメールや提案書では、読み手への配慮も大切な心遣いです。

「さ入れ言葉」に注意

不要な「さ」を入れる「さ入れ言葉」の問題にも注意が必要です。例えば、「休ませていただきます」「行かせていただきます」などの表現は誤用となります。
「さ」が必要かどうかの判断は、以下の方法で簡単に確認できます。
動詞に「ない」を付けて否定形にし、ローマ字表記にしたときに、「nai」の前が母音の「a」になる場合は「さ」は不要です。

「さ入れ言葉」に注意

例えば「休まない=yasuma-nai」「行かない=ika-nai」となり、どちらも「nai」の前が「a」であるため、「休ませていただきます」「行かせていただきます」が正しい表現となります。
つまり、「ない」の前が母音の「ア」になる場合、「さ」は不要です。

このような「さ入れ言葉」に気をつけることで、より洗練された印象になります。特にビジネスシーンでは、正確な言葉遣いを用いることで、信頼関係の構築にも重要な役割を果たすでしょう。

1文の中で多用しない

「させていただく」は1文の中で何度も使用すると、くどい印象を与えてしまいます。
例えば「本日ご提案させていただいた内容について確認させていただき、後ほどご連絡させていただきます」という文章は、過剰な使用により読みづらくなっています。

このような場合は、「本日ご提案した内容を確認し、後ほどご連絡させていただきます」のように、必要最小限の使用にとどめることで、文章の自然さを保てます。
「させていただく」を用いる場合は、最も重要な行為、特に相手の許可や恩恵を受ける場面に限定して使用しましょう。例えば取引先との商談では、「ご提案させていただいた価格について、社内で検討し、改めてご報告いたします」のように、重要な行為に絞って使用することで、適切な敬意を示すことができます。

「させていただく」の代替表現と言い換えテクニック

シーン別、適切に言い換える方法

「させていただく」は状況に応じて適切な言い換えが可能です。会議での資料配布時には「配布させていただきます」ではなく、シンプルに「配布します」や「配布する」と言い換えることで、自然な印象を与えられます。
お客様への問い合わせ対応では、「確認させていただきます」を「確認いたします」と言い換えるのが効果的です。お客様のために確認するという行為自体が敬意を示しているため、「させていただく」は不要となります。
「させていただく」の使用は、相手の許可を得ている場合や、自分が恩恵を受ける場合に限定されます。言い換えの基本は、行為の性質を見極めることです。相手への配慮や敬意を示す必要がある場合は「いたします」を、通常の業務連絡などでは「します」や「する」を使用しましょう。

相手との関係性に応じた表現の使い分け方

相手との関係性に応じた敬語表現の使い分けには、社内外の立場を考慮することが重要です。社外の顧客に対しては、自社の上司であっても敬語を使用せず、「部長が確認いたします」のように簡潔に伝えます。なぜなら、社外の人に対して社内の人物を立てると、敬意の対象がずれてしまうためです。

顧客との会話では、自社内の役職や地位に関係なく、全ての社員を謙譲語で表現します。例えば、「社長がご説明いたします」「担当者がご連絡いたします」といった形式です。また、取引先との関係性が深まっても、過度な親しさは避け、適切な距離感を保ちましょう。例えば、「〜様」という呼称は継続して使用し、丁寧な言葉遣いは維持します。

メールや文書でのやり取りでは、相手の役職や年齢に関わらず、常に丁寧な表現を心がけ、「いたします」「申し上げます」などの謙譲語を基本とします。

相手との関係性に応じた表現の使い分け方

より丁寧で自然な表現に変換するコツ

丁寧な言葉遣いを維持しながらも、「させていただく」を使わない表現方法があります。例えば、依頼の場面では「この書類を確認させていただけますか」を「この書類を確認してもよろしいでしょうか」と言い換えることで、より自然な敬意を示せます。

前置きの言葉を効果的に使うのも一つの方法です。「申し訳ございませんが」「恐れ入りますが」などを添えることで、丁寧さを保ちながら用件を伝えられます。

状況に応じて「させていただく」を適切に使いましょう

「させていただく」は、「相手または第三者から許可を得る」「その行為で自分自身が恩恵を受ける」の2つの条件を満たす場合に使用する敬語表現です。

適切ではない使われ方をしている場合も多いので、本記事で解説した注意点によく留意しましょう。また、不適切な表現やグレーな表現を避けるため、「いたします」などの言い換え表現を覚えておくと安心です。
相手の立場や状況を考慮しながら、適切な敬語表現を選択することで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。必要以上にへりくだる表現を重ねるのではなく、相手に伝わりやすい表現を心がけましょう。

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