「音声モニタリングは、もう導入済みです。」そう胸を張りたいはずなのに、現場ではいまだ“録ってるだけ”。再生も評価もされず、ただ蓄積されていく音声データ。「これ、何のためにやってるんだろう……」と感じ始めてはいませんか?
本来、音声モニタリングは、品質向上や育成支援のための強力な武器です。
ですが、その威力を引き出すには、運用体制や目的共有、評価のしくみが不可欠です。 なぜ、せっかく導入した音声モニタリングが“使えない”ままで終わってしまうのか。
現場の声と実態をもとに、その根本原因と改善のヒントを紐解きます。
「録っているだけ」──音声モニタリングが“使えない”理由
録るだけで活用できる?──“目的共有の欠如”が生む誤解
音声モニタリングを導入する際、多くの企業では応対品質の可視化、教育への活用、顧客満足度向上といった明確な目的を設定し、現場での活用を前提とした運用設計を進めています。
ところが、数ヶ月が経過すると、現場ではその目的があいまいになり、録音ツールは「そこにあるだけ」の存在へと変化していきます。
なぜ、このような現象が起きてしまうのでしょうか?
理由の一つは、教育目的での録音活用に必要なリソースが現場に圧倒的に不足していることです。録音を聞き、内容を分析し、フィードバックを行うには相応の時間とスキルが必要ですが、管理職や現場責任者は日々の業務に追われ、それどころではないというのが実情です。
やがて「録音はトラブル発生時の確認用」という運用が常態化し、本来の目的である教育や改善のための活用は後回しになってしまいます。そして、もう一つ見落とされがちな問題があります。それが、モニタリングを継続的に運用できる人材が現場にいないという構造的な課題です。
技術はある、でも“運用できる人”がいない
録音ツールの整備は進み、導入のハードルは確実に下がっています。それでも活用が進まない最大の原因は、そのツールを実際に運用・管理できる人材が社内にいない、または圧倒的に足りていないことです。
効果的なモニタリングには、どの通話を抽出し、どの視点で評価し、どのようにフィードバックにつなげるかという一連の設計と実行を担う人材が不可欠です。
しかし、現場でこの役割を専任で担っているケースはほとんどありません。多くの場合、管理職や現場責任者に委ねられていますが、彼らはシフト調整、新人フォロー、問い合わせ対応、数字の管理など、日々の業務を回すことで精一杯です。
加えて、「あの通話、ちょっと気になるから後で聞いておいて」といった断片的な依頼が飛び込んでくるだけで、評価軸や改善策を検討する余裕はなく、優先順位の下に沈んでいってしまいます。
結果として、モニタリングは「やるべきだとは思っている。でも、日々の現実の中では実行できていない」業務のひとつになってしまいます。
さらに問題を複雑にしているのが、評価基準やチェック方法の曖昧さです。「何をどう見ればいいのかわからない」「指摘が属人的になってしまう」という状態になり、「聞くこと自体が負担」という認識が広がっていきます。
つまり、音声モニタリングが定着しない根本原因は、技術の問題ではなく、人と体制の問題なのです。録音環境を整えただけでは不十分で、運用できる人材がいて初めて機能する仕組みだからです。
音声モニタリングが“使えない”ままの理由と現場のリアルな声
| 課題カテゴリ | 現場のリアルな声 | 背景・構造的な課題 |
|---|---|---|
| リソース不足 | 「聞きたいけど、忙しくてそれどころじゃない」 | SVやリーダーが日常業務で手一杯 |
| 属人化 | 「〇〇さんはOKって言ってたのに、今回はNG?」 | 評価軸や視点が人によって異なる |
| 判断基準の不明確 | 「前は何も言われなかったのに…」 | 「良い・悪い」の基準が曖昧で共有されていない |
| フィードバックの負担 | 「伝えたいけど、どう言えば…」 | 評価と指導を1人で担う構造的負担 |
| 活用イメージの欠如 | 「録ってどう使えばいいの?」 | 録音の目的や運用ルールが未整備 |
「何が正解か」が不明確──混乱する現場と評価のばらつき
通話録音をフィードバックに活かすには、前提として「評価の方向性」や「目的の共有」がある程度すり合わされていることが欠かせません。
たとえば、「お客様への配慮が感じられる対応」とは何か、「避けるべき表現」のラインはどこか。
こうした判断基準が不明確なままでは、モニタリングの目的がぼやけ、「録ってるだけ」で終わってしまいます。
現場からも、こんなリアルな声が上がります。
「これ、前も同じ言い方したけど、そのときは何も言われなかった」
「○○さんはOKって言ってたのに、今回はダメなの?」
「結局、人によって言うこと違うから、どれが正しいのかわからない」
こうした小さな戸惑いが積み重なることで、「録音を聞いても何をどう見ればいいのか分からない」「指摘が属人的で納得できない」といった状態に陥り、モニタリングが活用できない原因になります。
これはまさに、“粒度が揃っていない”状態。
どこまでが許容され、どこからが改善対象になるのか、評価の軸がぶれていることを意味します。
評価する側も、される側も、共通言語がないまま属人的に対応すれば、現場の信頼を損なうだけでなく、せっかくの録音ツールも、“使われない仕組み”になってしまいます。通話録音を本当の意味でフィードバックに活かすには、明確な評価基準とその共有が不可欠です。
それが、属人的な指摘を防ぎ、現場に納得されるモニタリングへの第一歩となるのです。

活用されない音声モニタリングが、現場にもたらす静かな弊害
“誰も聞いていない録音”が、現場にもたらす変化
音声モニタリングは、録音して終わりではなく、応対品質の向上や育成につなげてこそ意味を持ちます。しかし、「録っているけれど使われていない」状態が続けば、現場では静かな変化が生まれます。
たとえば、以前は指摘があったのに最近は何も言われない、聞いているのかいないのか、運用の実態が見えない。そうした状況が続くと、オペレーターの中には自然とこんな思いが芽生えていきます。
たぶんもう、誰も聞いてないんだな
それは反抗や手抜きではなく、「頑張っても、誰も見ていないなら、そこまでしなくてもいいかもしれない」という、ごく静かなゆるみです。やがてその感覚は、チームの中にじわじわと広がり、モニタリングは”あるけれど気にされていない存在”として埋もれていきます。
“改善のチャンスを逃す、“使われない録音”の放置リスク
録音データは、本来”問題を見つけるため”だけでなく、”応対品質向上のため”の重要な材料です。しかし、それが活用されないまま蓄積されていくと、評価や改善に活かす機会を失うことになります。
オペレーターの側には「録音はあっても、誰にも見てもらえない」という失望感が生まれ、管理側でも「あとで確認しよう」と後回しにされるうちに、タイムリーさを失い、やがて”使われない録音”として放置されていきます。
このような状況が続くと、小さな表現のゆらぎや対応のズレが見逃され、本来なら育成や品質改善につながったはずの気づきが、現場にも管理側にも届かなくなっていくのです。
録音があるのに「聞いていない」「活かせていない」状態は、企業にとっては、蓄積されたナレッジが失われていくことと同義です。
せっかく蓄積されたデータが、ただ時間の経過とともに古くなっていくだけの状態は、企業にとって大きな機会損失といえるでしょう。優秀なオペレーターの対応手法を横展開する機会、新人が陥りやすいミスを事前に防ぐ機会、顧客からの貴重なフィードバックを活かす機会──これらすべてが、活用されないまま蓄積されたデータの中に眠り続けることになります。
企業がモニタリングに期待する「育成・改善のサイクル」は、データを活用して初めて回り始めるものです。投資したシステムやリソースを無駄にしないためにも、録音データの活用体制を整えることが急務なのです。
音声モニタリングを“使える仕組み”に変えるには?
「音声モニタリングが“使えない”理由|現場が活用できない本当の原因とは?」
音声モニタリングが定着しない原因は、単に「忙しいから」ではありません。
録音して終わりではなく、活用されるには「評価の方向性」と「現場への共有」が必要です。
たとえば、「どんな対応が望ましいのか」「どこが指摘対象になるのか」──。
こうした基準があいまいなままだと、現場は判断に迷い、指摘にも一貫性がなくなります。
その結果、フィードバックが属人的になり、録音を聞いても「何を見ればよいのか」が見えなくなってしまいます。
さらに、多くの現場ではモニタリングを担う人材が不在、もしくは別業務との兼務です。
聞くべき通話の選定、評価、指導までを一人で行うには相当なリソースが必要ですが、それが確保されていない現実があります。
つまり、モニタリングが“使えない”のは、運用の仕組みがないまま導入されているからに他なりません。

社内だけでは見えない”当たり前の壁”
こうした状況を打開するには、まず重要な前提があります。それは、社内の視点だけでは限界があるということです。
現場にいると、どうしても「今のやり方」が当たり前になってしまいます。「この評価で問題ないだろう」「このくらいの頻度で十分だろう」といった判断も、客観的に見ると改善の余地があることが少なくありません。
また、1章で触れた「属人的な評価」の問題も、同じ組織内にいる限り根本的な解決が困難です。評価する側とされる側が同じ組織内にいることで、どうしても「言いづらさ」や「受け取り方の偏り」が生まれます。直属の上司からの指摘は、時として個人的な感情として受け取られてしまうこともあります。
さらに、現場の管理職は日々の業務に追われているため、「客観的な評価基準をゼロから設計する」「継続的な運用体制を構築する」といった、モニタリングの仕組み化に必要な作業に十分な時間を割くことができません。
これらの課題を解決するには、第三者の客観的な視点を活用することが有効です。
外部の専門的な知見を持つ人材が関わることで、現場では見えなかった改善のポイントが明確になります。社内の「当たり前」に縛られることなく、より効果的な評価基準や運用ルールを設計できるため、属人化を防ぎやすくなります。
また、外部の専門家が評価やフィードバックに関わることで、現場の管理職は日常業務に集中できるようになり、オペレーターも「客観的な視点からの指摘」として受け入れやすくなります。

“使える”モニタリングに変える実務ステップ
| 実施項目 | 内容の例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 評価項目の明文化 | 「挨拶」「共感」などのチェック項目を明示 | 評価のばらつきを抑制、納得感を高める |
| 通話選定ルールの明確化 | 抽出対象・件数・頻度を定める | 公平性を担保、実施のハードルを下げる |
| コメントテンプレートの整備 | 指摘・改善点・代替案などの例文を整備 | 書く側の負担軽減、伝わる表現の質が安定する |
| フィードバック分業体制 | 評価と育成を別の人が担う体制に | 主観を排除、伝わり方の精度が上がる |
| 成果の見える化 | 改善事例の共有やフィードバック結果をチーム展開 | モチベーション向上、組織全体の品質底上げ |
重要なのは、現場の負担を増やすのではなく、むしろ軽減する方向で改善を進めることです。
複雑な仕組みを導入するのではなく、現場が無理なく継続できる運用体制を整える。評価と指導の役割を分離することで、管理職の負担を軽減しながら、より客観的で納得感のあるフィードバックを実現する。こうした仕組み化により、音声モニタリングは「録っているだけ」から「現場で活用される仕組み」に変わっていくのです。
さらに、モニタリングにかかる工数そのものを削減できれば、現場の管理職にかかる負担が軽減し、限られた人材や時間をより利益に直結する業務に振り向けることができます。モニタリング業務の効率化は、結果として品質と生産性の向上を両立させる組織体制の構築にもつながるでしょう。

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