「お電話を録音させていただいております」―この言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、なぜ企業は通話を録音する必要があるのでしょうか?単なる品質管理のためだけではなく、実は法的な要請や様々なビジネス上の理由が存在します。法律で義務付けられているケースもあれば、クレーム対応の証拠として必要とされることも。適切な通話録音は、企業の法的リスク回避とサービス品質向上の両面で重要な役割を果たしています。この記事では、企業が知っておくべき通話録音の法的根拠や注意点を紹介します。
企業の通話録音が法的に求められる具体的な理由
個人情報保護法に基づく通話録音の法的義務
個人情報保護法(※1)において、顧客との電話の通話内容が個人情報に該当するかは、特定の個人を識別できるかが判断基準です。通話内容に顧客の氏名や連絡先、取引履歴など、特定の個人を識別できる情報が含まれる場合、「個人情報」として扱われます。
この場合、企業は法律に基づき、通話録音の利用目的を明確に特定し、通知または公表する義務があります。例えば「品質向上のため」「トラブル防止のため」などの目的をホームページや契約書に記載することが求められます。
また、録音された個人情報の漏洩や不正アクセスを防ぐため、適切な安全管理措置を講じることも義務付けられています。具体的には、アクセス制限の設定や暗号化、従業員教育などが必要です。
個人情報保護法では、通話録音を実施していることを相手にその場で通知する義務は明文化されていませんが、利用目的の明確化と通知・公表は義務づけられています。
(※1)個人情報保護法「(取得に際しての利用目的の通知等)」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal
金融商品取引法など業種別に求められる録音要件
特定の業種では、通話録音が法的に義務付けられているケースがあります。例えば金融商品取引法(※2)では、金融商品の勧誘や契約に関する会話を録音・保存することが事実上求められています。これは投資家保護の観点から、取引内容の正確な記録を残すためです。
医療業界でも、診療予約や医療相談の電話対応において通話録音が推奨されており、医療過誤の防止や患者とのトラブル解決に役立てられています。 また、保険業界では契約内容の説明や重要事項の確認において、正確な情報提供の証拠として通話録音が重視されています。
これらの業種別要件では、単に「企業の電話録音している」という事実だけでなく、録音データの保存期間や管理方法についても詳細な規定が設けられていることが特徴です。業種ごとの法的要件を理解し、適切な通話録音体制を構築することがコンプライアンス強化には不可欠といえるでしょう。
(※2)金融商品取引法
https://www.fsa.go.jp/policy/kinyusyohin/index.html
各法令の条文については、e-Gov法令検索にてご確認ください。
訴訟リスク対策としての通話記録の重要性
通話の録音は、顧客とのトラブルが訴訟に発展した場合の強力な証拠となります。特にハラスメント行為や社用車事故、取引先との契約トラブルなど、「言った・言わない」の争いが生じやすい場面では、企業の電話が録音されていることが法的紛争を有利に進める決め手となるのです。
例えば、不当な要求を受けた場合、録音データがあれば相手の高圧的な態度や理不尽な要求を客観的に証明できます。これにより、訴訟に発展しても企業側の正当性を示す決定的な証拠となります。
また、重要な商談や契約内容の電話確認においても、録音は「口頭での合意」を明確に記録します。後日、取引条件について認識の相違が生じた場合でも、録音データを根拠に迅速な解決が可能です。
通話録音データは適切に管理し、バックアップを確保することが重要です。加えて、録音した内容は無関係な第三者には漏洩させず、必要に応じて弁護士に内容を確認してもらうことで、証拠としての価値を最大化できます。

海外との取引における国際法規制への対応
海外との取引では、国ごとに通話録音に関する法規制が大きく異なるため注意が必要です。海外の規制やGDPR(※3)などでは、個人データの取り扱いに関して厳しい制限が設けられていることがあります。
特にヨーロッパでは厳格な規制があり、ドイツ・アイルランド・イギリスなどでは全参加者の同意がなければ録音は違法となります。アメリカでは州によって通話録音に関する法律が異なり、カリフォルニア州やミシガン州など一部の州では「全当事者の同意(two-party consent)」が必要とされます。
海外との取引では、単に「録音がある」という事実を通知するのではなく、事前に各国の法令を調査・現地の専門家やコンプライアンス部門と連携する体制を確立し、各国の法規制の具体的な詳細や最新情報を十分に確認・対応することが大切です。 さらに、契約や利用規約などへの反映も検討しましょう。
(※3)GDPR:General Data Protection Regulation
個人データ保護やその取り扱いについて詳細に定められたEU域内の各国に適用される法令
通話録音がもたらす業務改善とコンプライアンス強化のメリット
クレーム対応の正確な記録による問題解決の迅速化
クレーム対応では、通話内容を録音することで問題解決に大きく貢献します。顧客からのクレーム内容を正確に記録することで、「言った・言わない」の行き違いを防ぎ、事実関係の把握することができます。
例えば、製品の不具合に関するクレームでは、顧客が説明した具体的な症状や使用状況を録音から何度でも確認できます。これにより、技術部門への正確な情報伝達が可能となり、解決策の提案までの時間が大幅に短縮されます。
また、感情的になったお客様との会話も、後から冷静に分析することで、本当の不満点を特定しやすくなります。過去の似たケースと比較検討することも容易になり、組織的な問題解決能力が向上します。
さらに、クレーム対応の録音データは、再発防止策の立案や社内研修にも活用でき、長期的な顧客満足度向上にも寄与します。クレーム一つひとつを貴重な改善機会として活かせるのも、通話録音の大きなメリットといえるでしょう。

オペレーターの応対品質向上とパフォーマンス評価への活用
通話録音は、オペレーターの応対品質向上に直結する強力なツールです。録音データを分析することで、挨拶、説明の分かりやすさ、顧客の質問への対応力など、具体的な評価指標に基づいたパフォーマンス評価が可能になります。
最近では、AIを活用した音声分析技術が進化し、オペレーターと顧客の感情までリアルタイムに可視化できるようになりました。優秀なオペレーターの応対パターンを「成功事例」として共有したり、トークスクリプトの改善にも活用できるため、チーム全体のスキルアップにつながります。さらに、感情分析を通じて離職リスクの高いオペレーターを早期に発見し、適切なフォローを行うことも可能です。
通話内容の分析による顧客ニーズの把握と満足度向上
電話が録音されていることの大きなメリットは、この蓄積されたデータから顧客ニーズを正確に把握できる点です。
例えば、問い合わせ内容をカテゴリ別に分類・分析することで、お客様が求めている情報や改善すべきサービスの傾向が明確になります。「製品Aについての質問が急増している」といったパターンを発見できれば、FAQの拡充や社内教育の強化など、迅速な対応が可能です。
このように通話録音は単なる記録にとどまらず、顧客の真のニーズを把握し、サービス品質を継続的に改善するための貴重な資産となるのです。
法令遵守のための通話品質チェック導入と運用ガイドライン
通話録音の事前告知と同意取得の正しい方法
通話録音を行う際に最も重要なのは、顧客への適切な事前告知と同意の取得です。法的リスクを回避するためには、通話開始時に「この通話は品質管理のため録音しています」といった明確な案内が不可欠です。
ただし、単に「品質管理のため」と伝えるだけでは不十分な場合があります。多くの企業では、品質向上だけでなく、サービス改善やトラブル記録など複数の目的で録音を利用しています。そのため「本通話は品質管理、サービス向上、および顧客対応の記録のため録音しています」というように、具体的かつ多面的な目的を伝えることが望ましいでしょう。
このような明確な告知によって顧客の理解と協力を得られれば、後々の法的トラブルを未然に防ぎ、企業と顧客双方の信頼関係構築にも寄与します。曖昧な表現や不十分な説明は避け、常に透明性を保った対応を心がけましょう。

第三者の通話品質チェックを導入する
通話品質向上の一環として、通話品質チェックのアウトソーシングは有効な手段です。第三者の専門スタッフによる客観的な評価を通じ、内部評価では気づきにくい改善点を明確にし、品質向上を実現します。
具体的には、現場経験豊富な専門スタッフがトークスクリプトやチェックシートに基づいて各通話を分析します。これにより、オペレーターの対応品質が客観的に評価され、改善案が提案されるとともに、詳細な分析レポートが作成されます。さらに、外部のリソースを活用することで、最新の市場動向や評価手法が反映され、件費や管理コストの削減にも寄与します。

録音データの適切な管理とプライバシー保護の実践方法
通話録音データの適切な保存期間と廃棄ルール
通話録音データの保存期間については、業種によっては監督官庁の指針や業法により保存年限が定められていることがあります。
一般的には、顧客とのトラブル対応やオペレーター教育に活用できるよう、可能な限り長期間の保存が推奨されます。ただし、保存期間を決定する際には、ストレージコストや業務上の必要性、システムの制約などを総合的に考慮することが重要です。
金融機関では取引記録として最低5年間、医療関連では診療情報として最低3年間など、業界特有の基準に従う必要があります。
保存期間が終了したデータは、個人情報保護の観点から確実に廃棄しなければなりません。データの完全消去など、情報漏洩リスクを排除した廃棄方法を選択し、廃棄記録を残すことでコンプライアンスを強化できます。

録音データへのアクセス権限管理と監査体制の構築
通話録音データのセキュリティを確保するには、適切なアクセス権限管理と監査体制の構築が不可欠です。まず、会社の電話が録音されているシステムでは、部門や役職に応じたアクセス権限を設定することで、必要な人だけが録音データを閲覧できる仕組みを作ります。
また、「誰が」「いつ」「どの録音データに」アクセスしたかを記録する監査ログの取得も重要です。定期的な監査を実施することで、不正アクセスの早期発見と迅速な対応が可能になります。
特に大規模な組織では、多数の社員が録音システムを利用するため、厳格なアクセス管理と監査体制の構築がコンプライアンス遵守と情報セキュリティ確保の鍵となります。
通話録音で実現する品質向上と安心の運用
企業における通話録音は、法的要件への対応とビジネス価値の向上の両面で重要な役割を果たしています。また、録音データの適切な管理とプライバシー保護を徹底するためには、アクセス権限の設定や定期的な監査が必要になります。
ここまでの記事で、通話録音が法令遵守や品質改善にとって欠かせないツールであることを解説いたしました。しかし、社内での品質管理やモニタリング体制の構築には専門知識や人員が求められます。
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